2012/02/10

宗 文洲さんのメルマガ

「宗メール」の配信がありました。現場主義の大切さが、日本企業から消えています。
顧客を見ていないから、努力する方向が正しくありません。
方向違いの努力は、どんなにすごいものであっても、顧客の心をつかむことは無いでしょう。

 行政も、現場主義であるべきです。市民には閉塞感が広がっています。
市民の思いを肌で感じることが必要です。
私の思う「市民が主役の対話型行政」は、時間はかかるけれども、努力すべき方向として正しい選択だと思います。

 以下、長いですが、「宗メール」を引用します。


 1.論長論短 No.159
                 いつもの袋小路
宋 文洲

シャープ、パナソニック、ソニー、エルピーダメモリ、マツダ・・・これだけ
のメーカーが赤字を計上していることに驚きました。震災、円高、タイの洪水、
ユーロ危機・・・過去の一年は日本企業にとって大変厳しい年でしたが、それ
でも説明不能な軒並み赤字でした。

たとえばシャープ製品の場合、震災と円高がなければシャープ製品はもっと世
界で売れたでしょうか。売れたとすればそれはテレビでしょうか、それとも携
帯電話でしょうか。アップルとサムソン製品が売れたのは果たしてウォン安や
ドル安のお陰でしょうか。

そもそも日本メーカーは何をどう作るかというよりも何を止めるべきかがもっ
と大切であるはずです。どんな高機能をつけてもどんなCMを流しても所詮コモ
ディティ化された製品です。所詮縮小中の日本マーケットにしか通用しないの
です。

これについて一部の方々、とくに年をとった方々は必ず「ものづくり」の強化
を対策として出すのですが、彼らはこの言葉を既に何十年も言ってきたことと、
後輩達が何十年も石にかじりついて頑張ってきたことを忘れています。

日本のものづくりの力が弱くなったのでしょうか。日本製品の技術力と品質が
韓国や米国に負けているのでしょうか。違います。むしろこだわりすぎているのです。

北京では日本人である妻がラップから包丁まで日本のものを使うことを私はよ
く理解できますが、同じ主婦の中国人の妹はそんな細かさを求めていません。
ウォシュレットでないと気持ちが悪いと思う日本人は多いですが、海外では殆
ど見当たらないのは周知のとおりです。

日系メーカーの相対的衰退は紛れもなく長期トレンドであり、昨年から始まっ
たことではないのです。努力が足りないからではなく、努力の方向が間違って
いると考えたほうが無難でしょう。「もの」と「つくり」に目が奪われて大切
な顧客を見ていないのです。

北京の我が家には日本メーカーのテレビも中国メーカーのテレビもありますが、
正直区別が付きません。わざわざ日本製テレビを買う時代はもう20年前までの
ことです。確かに痒い所に手が届くような機能があるのですが、大陸型の人に
とってかえって面倒に感じる場合もあります。

車と言えば、安いものなら中国メーカーを買うし、高いものならドイツ車。北
京の人々は遠出もしないくせに大きなSUV(スポーツ用多目的車)を好みます。
ヒュンダイがすぐそのニーズに応えるから中間層のシェアを掴みました。燃費
がよく故障が少ない日本車は格好を付けたい車初心者の中国ユーザーに地味に
見えるのです。

田舎者だの成金だの不経済だのを言うのは感覚の自由で問題はありませんが、
買ってもらえないビジネスマンが言うならば筋違いでしょう。

「良いものを作れば必ず売れる」。愚書「やっぱり変だよ日本の営業」
(http://krs.bz/softbrain/c?c=1810&m=12752&v=9b388a91がこれを批判して10年以上経ちま
すが、メーカーの経営者と技術者の多くは未だにこの認識を持つことができません。

売れない理由は現地社会に溶け込めば自然に分かりますが、「もの」と「つく
り」にこもった人々は現地社会に興味がありません。会議と日本人バーで徹夜
の議論の末、いつも同じ袋小路を行く、「もっと『ものづくり』を磨こう」。