2014/02/10

里山がひらく持続可能社会

昨日は、龍谷大学・里山学研究センター シンポジウム「里山がひらく持続可能社会」に参加しました。



 基調講演は、髭を蓄えた藻谷浩介さんの「里山資本主義とは」でした。

里山資本主義をマネー経済に対峙するサブ経済として、多様性のなかで考える大切さを話されていましたが、このシンポジウムが薪など里山そのものの利用がテーマであったので講演時間が45分では短すぎました。

 続いて、龍谷大学里山学研究員の奥敬一さんの「薪が切り拓く里山の未来」。

戦後、エネルギーとして薪が使われなくなって、里山の新陳代謝が悪くなっています。里山に人がはいり、広葉樹を伐採して利用することで若返らせることが必要です。


活発な広葉樹林では伐採しても、根株からびっしりと芽が萌芽し、成長して行く根株からの萌芽更新と、樹木が伐採されたことにより地表に太陽光が届き、周囲に落下していた種子から天然更新が進むので、植林の必要はありません。

多くの里山の森林が、定期的に伐採を行っても萌芽更新により再生する持続的な資源だったので、地域で管理されている入会地も多かったようです。

かつて活用されていたように、里や物広葉樹を使って実験がされています。伐採1年後の萌芽更新も確認されています。


 Hibana代表取締役の松田直子さんの「薪炭革命」。

京都の町屋と里山をつなげる。京の町屋では煙が近所迷惑になるので、間伐材や製材端材を加工した木質ペレットの利用を進められています。

ペレットストーブは電気で空気を供給して効率よく燃焼させ排気するので煙は出ないそうです。
都市部の暖房で化石燃料を使わずに木のぬくもりを感じてもらえるのはペレットストーブしか方法がないのかもしれませんが、ペレットをつくるのに化石燃料を使う必要があるので、少し複雑です。煙突が許される環境なら薪ストーブのほうがよりエコであると思います。



この後、龍谷大学文学部教授丸山徳治さんの講演「持続可能社会の条件と里山的自然」。
明治以来、江戸時代18世紀以降の日本各地に発達した伝統的森林管理法をかなぐり捨てて、ドイツ林学とを取り入れながら、ドイツ林学が20世紀に入ってから生態学の知見と結びつきながら大きく発展したことを無視した延長線上に戦後の拡大造林があり、里山を崩壊させてきたこと。
複層混交林を基本とした多面的機能により森林・里山は再生産され持続可能となること。持続可能社会を追求することが、未来世代への責任を持った人間らしい課題であることを主張されていました。

最後に、パネルディスカッション「里山がひらく持続可能社会」があり、里山資本主義とTPP、政治との関わりや、都会育ちの学生にとっての里山についての意識などが議論されました。
断定的な二分法的思考から抜け出し、多様性を受け入れることから「里山がひらく持続可能社会」へと進むことができます。