「故郷はなぜ兵士を殺したか」を読了しました。
日露戦争直後に「英霊」という言葉が生まれた。戦争の大義が何なのか、民衆にはよく飲み込めていないなか、国外での戦いが続き、かつての地域の強い絆が、武勲を挙げなければ郷土で家族の肩身が狭くなるのではと感じさせ、名誉の戦死を遂げず郷土に帰ることが許されない強い空気がつくられていく。
前線の兵士に届けられる、家族や郷土の子供たちからの慰問文。「無言の凱旋を待っている。どうか戦死してください。」、「靖国さんへ凱旋せよ。」、「天皇陛下のために命を捧げて下さい。」・・・繰り返し送られてくる慰問文は兵士への強烈な圧力になり、兵士も「只一死もって報国を期すのみに御座候。」と返す。
郷土の互助精神が生み出した悲劇でもある。