2013/03/07

世界の多様性~家族構造と近代性

エマニュエル・トッド著「世界の多様性~家族構造と近代性」を読みました。

人類学者エマニュエル・トッドをご存知ですか?

この本は目からうろこがたくさん落ちました。

70年代のフランスでは、ソビエトは全体主義に順応した新しいソビエト的人間が生まれ育っているので体制崩壊はないとされていました。

しかし、トッドは、ロシア人女性が識字率上昇の後に出産率が下がるという人類の普遍的傾向に従って近代化していることを示し、また、通常は下がり続ける乳児死亡率が、ソビエトでは 70年から上がり始めたことを指摘し、体制が最も弱い部分から崩れ始めたと主張して、人口統計学的手法でソビエト連邦の崩壊を15年前に予想しました。

この「世界の多様性」という本は、世界の家族構造を分析しています。そして、家族の構造の特徴(従属性や平等性、外婚系か内婚系)によって、政治的イデオロギーの自然的発生、識字率、経済成長を説明していますが、非常に説得力があります。


歴史を進化論的に見る見方もありますが、例えば、イギリスの家族構造をさかのぼって調査した結果、13世紀においてすでにイギリスでは核家族型が支配的であり、そこから個人主義モデルが立ち上がったのであり、権威主義家族の国では別の発達をすることになり、共産主義は共同型家族構造があって、はじめて受け入れられます。

経済は成長のプロセスの本質的な要素ではなく、識字率や女性の結婚年齢などの社会の根底的な要素が本質であり、成長の様式に類似性が存在します。

この本を読めば、日本とドイツの近似性と、なぜ、日本とドイツが民族的に世界のなかで広くつながれないかや、戦後の日本における家族構造の変化が必然的に少子化を起こしたことがわかります。

そして、家族構造の変化が、未来の日本社会にどのように影響をあたえるのかについても考えさせられます。