8月31日に、BSフジの特別番組「バイエルン 未来を追う旅 ~南ドイツのエネルギー革新&夢への挑戦!~」を見たことを書きました。バイエルン 未来を追う旅 ~南ドイツのエネルギー革新&夢への挑戦!~
今、バイエルン州では50%の電力を原発に依存していて、2022年までの脱原発を進めていますが、再生エネルギーのみでは不足するため、石炭火力発電所の建設も進めています。
その厳しい様子は記事にもなっていて、「ドイツの脱原発政策で石炭消費が増加-風力などへの移行難航」http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M912BR6KLVR901.htmlで読むこともできます。
ドイツでは原発を止めると大規模な停電も懸念されるようで、速やかな脱原発は厳しい状況ですが、一方で日本ではすでに原発稼働ゼロを経験しています。
少し古いデータですが、京都大学原子炉実験所の小出助教による日本の発電所の稼働率を調べたグラフがあります。
このグラフによると、原子力発電所は83.8%と高い設備利用率ですが、水力発電所は25.8%、火力発電所も43.6%と、驚くほど低い設備利用率となっています。こんなに設備利用率は低くはないだろうと少し疑いましたが、最近のデータと比較すると間違いないようです。
このあと、原子力発電所の設備利用率は、2002年に明らかとなった不正問題の点検等により、定期検査期間が長期化したため設備利用率は40%台に低下しました。その後徐々に回復するも、60%台にとどまっていたようですが、水力と火力の設備利用率を上げることで簡単にカバーしています。
日本はバイエルン州と違い、水力と火力の発電設備に余裕があります。
経済産業省資源エネルギー庁が発表している電力調査統計に発電設備利用率があり、月単位で利用率が集計されています。http://www.enecho.meti.go.jp/info/statistics/denryoku/result-2.htm
冷暖房による電力需要が最も多い24年8月と25年2月の設備利用率を見ると、水力・火力とも1998年に比べて利用率が高く、水力は多くが90%を超え限界に近いですが、火力は25年2月の北海道は高いですが、他の地域は余力があるように見えます。問題は原発が稼働している関西の設備能力と思われます。
(注=太陽光の設備利用率は、日射量の自然条件に左右され、夜間は発電しないので最大でも20%台を上回ることはありません。)
震災後、宮津の火力発電設備も再稼働するのに3年かかるとの話も聞いたことがあり、関西電力は原発への依存率が高かったので、火力発電所の設備更新をしておらず、今も原発の再稼働を前提としているため、火力発電所の新設などの計画は聞きません。
24年の夏は節電の夏でしたが、今年の夏は猛暑にもかかわらず、節電目標なしに乗り越えました。固定価格買取制度により、再生可能エネルギーの導入が進んだことと、旧来の発電設備の利用率を上げたことで乗り切ったのではないかと思います。
日本もドイツと同じように老朽化した水力・火力発電所の更新などの設備投資も急がなければならないとは思いますが、バイエルン州のように、50%を原発に依存している条件からは、はるかに有利に脱原発を進められる状況にあると思います。
核廃棄物処理の行き詰まりを考えると、一気に脱原発を進めることを政治決断すべきときだと思います。