2012/09/06

エネルギー論争の盲点

「自然エネルギーの可能性と限界」に続いて「エネルギー論争の盲点」を読みました。著者は石井彰さんです。

著者は第1章で、電力として消費しているエネルギーが日本で25%であること、そのことを頭において考えないと、電気だけの部分最適に陥ってしまい、全体最適を失うことを指摘しています。

そして続く第2章も含め、エネルギーの歴史と人口の増加に触れ、70億人の生活がエネルギーの大量消費から成り立っており、エネルギーの高消費なくしては維持不能であることを冷静に訴えています。

第3章では、これまでのエネルギー論争が虚飾にまみれたものであったものとして否定しています。

化石燃料はあと数100年持つなかで、枯渇の議論ではなく環境負荷の面からの議論が必要であること。火力発電がCO2排出において悪者にされているが、古いものを複合発電方式にリニューアルすれば1,5倍発電効率が上がりCO2排出量が劇的に減ること。日本の火力発電所の効率が非常に悪いことが無視されていること。(原子力に力を入れてきたので、火力への技術革新が遅れていた。)原子力発電は膨大なコストがかかること。太陽光がドイツで利用されていることが紹介されているが、実情を無視した報道であり、日本では実用的ではないこと。詳しくは本を読んでいただきたいですが、著者の主張は明確です。
 
第4章では、日本が原子力を推進したために天然ガス後進国であることを資料で示し、天然ガスの利用の可能性を述べ、最後の第5章で、省エネの余地とコジェネレーションや火力発電のリニューアルと再生可能エネルギーの組み合わせによる原発脱却への手法と安全保障が述べられています。

この本と、「自然エネルギーの可能性と限界」を読んで、なぜドイツが脱原発の代替エネルギーとして天然ガスによる発電に力を入れているのか、その理由が良くわかりました。
この本もエネルギーに関心のある方にお勧めです。