広島国際会議場で開催された、8月30日の全国自治体政策研究会交流会議、31日の自治体学会、広島大会に参加してきました。
「地域からつくる日本の自治」~広島で描くまちとむらの未来~が大会統一テーマであり、31日は13の分科会に分かれて議論がありました。
13の分科会の内から、午前中は第3分科会「交流がつむぐ地域創造」、午後は第4分科会「まちとむらの小さな自治」に参加しました。
午前の第3分科会「交流がつむぐ地域創造」は、東京農業大学名誉教授の進士 五十八さんをコーディネーターとして進められました。
まず、総務省地域力創造グループ地域自立応援課長の牧 慎太郎さんから、総務省による地域力創造の取り組みとして、「定住自立圏構想」の支援内容とこれまでの成果と「地域おこし協力隊」制度について、これまでの課題と実績について報告がありました。
「定住自立圏」については京丹後市は対象外ですが、人口増減率の改善など一定の実績をあげています。「地域おこし協力隊」は、地域独自の魅力を高める人材力をアップするための施策であり、3年間で全国で400人あまりの実績があるが、危機感を持って前向きに取り組んでいる地域では、協力隊員任期後の定住を含め効果をあげています。
また、これまでの支援を当てにした過疎対策では効果が望めないこと、これからの参考として、神山町の大南さんを中心とした取り組みを紹介されました。
つぎに地域経営コンサルタントの古川 充さんから、「安芸灘とびしま4島連携の仕掛け支援の活動」報告がありました。
架橋により陸続きになった安芸灘4島ですが、長年の孤島文化の歴史経過などから、4島の観光資源の魅力を高めるための連携は容易ではなく、苦労されている経過など現在進行形での話を伺いました。
最後に、立命館大学政策科学部準教授の高村 学人さんから「コモンズとしての地域景観、ガバナンスとしての法 ~地域を育む法執行のあり方」という報告がありました。
景観は誰のものか、その法的な問題や景観訴訟においては、二者択一的な単純化した報道がなされている裏にある、景観を守るとする人も、開発を進めようとしている人も地域の住民であることや、専門の縦割りによって弊害が大きいこと。景観(環境)、建設、経済それぞれの分野の専門家が限られた視点から縦割りとなっていて全体で共有されていく舞台がないことなどの問題も指摘がありました。
午後からの第4分科会「まちとむらの小さな自治」は、同志社大学大学院教授の新川 達郎さんをコーディネーターとして進められました。
まず、名古屋市会議員の玉置 真悟さんから、(当初、区役所改革の一つとして考えられた)名古屋市の地域委員会について、モデル地区の副委員長を務められたなかでの地域委員会の制度的内容とその後の変遷、名古屋市行政が小さな自治への関心をなくしている現状などの報告がありました。
つぎに、上越市議会議員の石平 春彦さんからは、上越市の「地域自治制度と活動の実際」について報告がありました。上越市の地域自治区制度は、合併時の旧13町と旧上越市15区の28区に地域協議会を設立していること、委員は公選となっているが、2005年の5区を除いて定数に満たず、それ以外は選任投票は実施されていないことなど報告がありました。
上越市議会と協議会の意思が齟齬した事例は無いとのことでしたが、人が違い組織(機関)としての役割が違うのだから議会と協議会で思いが違うことがあっても問題はなく、それをすり合わせていくのが開かれた自治だと思っています。
つぎに、安芸高田市川根地区自治振興協議会会長の辻駒健二さんから、川根地区自治振興協議会の地域活性化の取り組みが報告されました。
ずっと以前に川根地区自治振興協議会におじゃまして、辻駒さんからお話を伺ったことが2回あります。68歳になられていますが、お元気そうでなによりです。
川根地区自治振興協議の取り組みは、http://www.soumu.go.jp/main_content/000027298.pdfなどをご覧ください。ここでは辻駒さんの言葉を少しだけ取り上げます。「住民がボーッとしていたら、役所の職員だってボーッとしている。じゅうみんがしっかりしないといけない」。「どう生きるかという考えなしにまちづくりの話はできない。それぞれの人々が自分の幸せについて自分で考える。そこからまちづくりが始まる。そして、自分たちでできることは自分たちでやる。行政にしかできないこともあるので、それは行政に委ねる」。地域づくりを長年実践され、率先して動かれてきたなかで多くの苦労をされていると思います。言葉の重みも違います。
最後は、地方自治ジャーナリストの葉上 太郎さんが、全国を取材して歩くなかでの、小さな自治への行政の無関心などシビアな状況も報告されました。