2012/09/06

自然エネルギーの可能性と限界

「欧州のエネルギーシフト」を読んだ後、エネルギーについてさらに知りたいとの思いから買った本のうちの1冊。

「自然エネルギーの可能性と限界」、著者は石川憲二さんです。

まず著者は新エネルギー法により提示された「新エネルギー」に首をひねっています。新エネルギー法は改正を重ねていますが、「新」に拘っているため再生可能エネルギー全般に及んでおらず、枯渇していく化石燃料を代替していく具体的なプランも示されておらず、日本のエネルギー政策の目標は見えていません。

風力と太陽光に期待が集まっていますが、ヨーロッパのように風速が安定している平地や海上での発電が向いていますが、日本では地形上建設に適した、遠浅で杭を打てる岩盤が下にある海岸は少なく、また、風力には風切り音や低周波音による騒音問題があるため、人里離れた山上がありますが、コストが高く付くのと、風が安定せず暴風や突風の危険性が海上よりも高いことから、向いていません。

また、風車の定格出力が3000キロワットとしても、発電効率は平均20%に過ぎず、発電用風車の寿命が20~30年であることから、実用的ではないとしています。

つぎに、太陽光発電ですが、現状の日本での発電効率は12%です。日本の日照時間は年間1600~2400時間で、3600時間を超える砂漠地帯や日本の1,5倍の南欧などと比べるまでもなく、あまり有利ではありません。

技術開発に期待する方も多いですが、製品コストを下げると発電効率も下がるのが現状のようです。

著者は風力と太陽光には否定的でしたが、水力と地熱は日本に有利だとしています。

水力では、まだ1,5倍まで開発が可能であること、ミニ水力やマイクロ水力が未利用に近いことから大いに期待が持てるとしています。また、地熱についても、フィリピンにも技術面で追い抜かれており、エネルギーのプロの間では、火力や原子力に匹敵するだけの規模を持つエネルギー源になりうる地熱の利用を優先した方が良いとの意見が多いと紹介しています。(政治家が風力と太陽光に力を入れるのは、利権と献金なんでしょうね。)

つぎに、、補助金と買い取り制度の問題を指摘し、また、古くなった火力発電所と水力発電所の設備をリニューアルし、発電効率を上げることの方が送電設備も既存のものがそのまま使えるので時間とコストはかからず、現実的な選択だとしています。

そして最後に、戦略なき政策では全体最適は実現できないと締めくくっています。

可能性と限界がわかりやすく書かれており、読みやすい本でした。エネルギーに関心のある方に推薦します。