私が山下一仁さんを知ったのも同じ頃で、中山間直接支払制度の設計をされたことと、その制度の設計にはウルグアイ・ラウンドなどの農業交渉に参加された経験が活かされていることなどを知り、その後、興味を持ち著書を読みました。
「WTOと農政改革」は、主要国の農業政策を通じて農業保護政策の正当性について農業の多面的機能など幅広い視点から説明しています。また、ガット農業交渉、ウルグアイ・ラウンド交渉、WTO農業交渉について、交渉経緯との関係も含めて農業協定の条文が解説されているので、WTOに農業政策がどのように制約されるのかがたいへんわかりやすく書かれています。
そして、今後のあるべき農業政策について、価格支持政策を廃止し、中規模以上の一定規模の農家に限定した直接支払いへの移行を提言されています。
私は読了後、この本を持って、当時食糧庁総務課長をされていた山下さんのもとを訪れましたが、山下さんはこの本を読んだことをたいへん驚かれました(なんと6,400円の本です)。また、一地方議員でありながらの行動力にも驚かれました。
その後、直接支払いの進展を期待したのですが、山下さんは退官されてしまい、農政は違う方向に進んでいます。
そして山下さんは農政アナリストとして活躍され、本も多数書かれていまが、まだ2冊しか読んでいませんが、農業への思いは変わられていません。他の本もこれから読んでいきたいと思います。