2012/11/17

金利上昇は想定外の危機?

財務省の資料によると平成23年度の国債発行額は、181兆5,024億円で、その内109兆円が過去の国債の借換債でした。今年度は、174兆2313億円が予定されていますが、今後の補正予算により発行額は増加すると思われます。

そして、平成24年度末の国債・借入金残高は、1,085兆5,072億円が見込まれています。

今は低金利で安定しているので、利払いの負担は9,8兆円です。人によっては金利が上昇しても、国民に還元されるのだから問題ないという人もいます。

しかし、そんなに単純ではありません。

金利が上昇すればどうなるか、たとえば、10年利付国債が1年後に、その時点での国債金利が2%に上昇し、流通価格が変動したとします。このとき、流通利回り2%の取引価格(時価)は、残存年数は9年ですから、90円84銭になります。つまり、100円30銭で購入した新発10年利付国債が9.4%下落してしまいます。

同様に、国債金利が3%になれば、取引価格は84.40円で下落率は15.8%、国債金利が4%になれば、取引価格は78.82円で下落率は21.4%です。

国債金利が3%になったとしても誰も異常な状態とは言えません。むしろ、ご年輩の方にはまだまだ低い金利と映るはずです。
しかし、3%になれば15,8%の下落となります。

さて、オバマ大統領が再選したことで、QE3の下での緩和強化によって、財政の崖を乗りきり、その後には予想を超えるスピードでアメリカ経済が回復する展開もあるようです。来年度にはサウジアラビアを抜き、世界最大の産油国となることから、エネルギーコストの低下などの好条件もあり、ドル高円安とともにアメリカが金利上昇傾向となり、日本へも金利上昇の影響が及んでくることも予測されます。

試算では、国債の金利が1%上昇するだけで大手銀行は6.4兆円の損失発生となるため、金利上昇とともに、大量の国債を損切りで売らざるを得なくなりますが、その時買い手はいません(2009年10月に起きた0.3%の金利急上昇の時も民間金融機関が損切りで売り、ゆうちょ銀行が買い支えています。)

極めて高いリスクがあるにもかかわらず、ドル安・円高にばかり目を奪われ、金利上昇のリスクに対する対応策は想定されていないようです。