2012/11/03

パットナムを再読して

ソーシャル・キャピタルの概念が注目を集めるにいたったロバート D.パットナムの名著「Maiking Democracy Wark(邦題・哲学する民主主義)」を再読しました。

9年近く前にこの本を読んで、議会の一般質問で「社会問題に関わっていく自発的団体の多様さ、社会全体の人間関係の豊かさの育成(ソーシャルキャピタルの強化)」を取り上げました。

副題として「Civic Traditions in Modern Italy」とあるように、この本はイタリアにおける1970年代の地方制度改革による州政府の創設から、同一制度でスタートした20州のその後の州政府の公共政策におけるパフォーマンスの違いについて分析しています。

州政府創設後の20年で、20州の間にパフォーマンスの違いがあらわれ、北部は発展し南部は衰退しています。

経済発展の水準は、非経済的要因を考慮して見ても、政治的民主主義に顕著な影響を与えています。経済発展の遅れはパフォーマンスを悪くしていますが、社会問題に関わっていく自発的団体の多様さ、社会全体の人間関係の豊かさ=市民度も高くありません。

市民度が低い州ほど、政治家との接触は圧倒的に仕事や情実の欲求に関わるものとなるが、高い州は政策や立法に連なるような傾向にあります。
市民度の低い州の住民は、彼らの政治的行動全般に対して、疎外感、無力感に苛まれています。
歴史的に市民的積極参加の規範とネットワークが欠けているところでは、市民共同体は機能せず、高いパフォーマンスは生まれません。

パットナムは、これらの分析結果から、北部と南部の州政府のパフォーマンスの差は、歴史的なソーシャル・キャピタルの蓄積の差であると指摘しました。

この本により「ソーシャル・キャピタルとは、人々の協調行動を活発にすることによって、社会の効率性を高めることのできる、「信頼」「規範」「ネットワーク」といった社会的仕組みの特徴」であるとする定義が広く理解されるに至っています。

さて、この本が書かれてから間もなく20年になりますが、8月にイタリアに旅行に行く前にこの本をさらっと読みました。そして、イタリアで添乗員さんや現地ガイドの方にお聴きするところでは、イタリアの南北格差はこの本の当時よりも大きくなっており、南部はイタリアのお荷物といわれ、治安も悪くなっていました。

ナポリは、添乗員から治安が悪いのでホテルの外に出ないで下さいと言われただけでなく、ゴミ処理にも問題があり、結構ゴミが散らかっていました。

旅行者として通り過ぎるだけでしたが、それでも、まちの雰囲気の違いはわかりました。イタリアに旅行に行き、また、あらためて再読してみて、京丹後市を活性化していくためにはソーシャル・キャピタル(「信頼」「規範」「ネットワーク」)を高める努力が必要だと感じました。