2012/01/05
弱い日本の強い円
三が日に読んだ4冊目は、佐々木融著「弱い日本の強い円」でした。この本は、本のタイトルと、「為替相場は国力を反映する。日本の財政赤字で円は売られる。人口が減る国の通貨を買う理由などない ― もっともらしい理由にだまされてはいけない。」という、本の内容の紹介を見て興味をもったので、円高についての知識を広げることにもなるのではないかと思い読みました。
この本は評価も高く、よく売れているようです。
去年、話をさせていただいたある国会議員は、「国債はもっと発行しても大丈夫、金利が上がっても、90%以上を国民が保有しており、国民の利益になる」と言っておられましたが、ヨーロッパではギリシャ国債の金利が上昇して、保有しているヨーロッパの金融機関は、評価損にあえいでいます。
国債は買い手がいなければ価値が暴落します。(通貨も買い手がいなければ(供給過多)安くなりますが、売り手がいなければ(需要過多)高くなります。)
日本銀行の調べによると、仮に日本の長期金利が1%上がると、日本の銀行が保有している国債等長期債務の評価損は9兆円に上り、3%以上上がると債務超過に陥ることが分かっています。
2009年10月に起きた0.3%の金利急上昇の時はゆうちょ銀行が国債を買い支えていますが、1%以上金利が上がるような場面では、買い支えることはできず、日銀が買い支える意外に買い手はありません。
しかし、日銀が国債を買い支えることによって、市場に通貨があふれると、インフレにより金利がさらに上昇することが想定され、そうなったら金利の上昇をだれも止めれないとも言われています。
また、海外における日本国債の保有割合は7%と低いですが、海外からの視点で見ると、日本国債の発行残高が多いため、仮に7%で計算しても56兆円と、ギリシャ国債の海外保有残高21兆円の2.5倍以上の規模があるため、極めて憂慮するものがあります。
海外は7%しか保有してないから安心だというのはレトリックにすぎません。海外が保有している残高の規模が問題であり、非常時に売りが出た時、買い支えれなければ1%でも危険であると認識する必要があります。
日本が信頼されているのは、ヨーロッパの国々と違い消費税の税率が低く、消費税を上げる余地が残されているからで、仮にデンマークのように25%まで上げることができれば、財政再建は非常に簡単だと考えられているからです。また、昨年、日本の首相は消費税を上げることを海外で約束しています。
さて、本に戻ります。
この本の帯にもあるように円高は止めようと思っても止められないようです。
しかし、円が高いのではなく、安くなったドルとの比較の問題となります。しかし、それは、国力の問題ではありません。物価の上昇が続いているアメリカでは通貨の価値は年々下がっていきますが、物価がデフレ気味の日本では通貨の価値が高くなっているため、他の物価が上昇している国の通貨に対しても同じく相対的に円は高くなってしまいます。
また、日本の景気はアメリカと連動することが多いため、日本が景気が良い時(つまりアメリカの景気が良い時)は円安になり、日本の金利に対してアメリカの金利が高く、その差が大きいほど円安になります。
アメリカは経常収支が赤字の国であるため、円を売ってドルを買う理由はありませんが、日本は逆で経常収支が黒字のため、ドルを売って円を買う理由があります。どちらもドルを買う理由がないため、自然の流れとして円高になります。
日本が国債を発行して、海外の金融機関などが購入することも、円を売ってドルを買うことになるので、円高に作用します。日本の財政赤字が拡大することが、現状では円高にの材料になっています。海外の金融機関の市政が買いから売りに転じた時、極めて強い円安の材料となります。
また、為替介入の効果がないことが書かれており、介入が大きなリスクになっていることが資料とともに示されています。日本の円売り介入は、債券(長期国債には含まれない)を発行して市場から資金を調達して行われており、104.5兆円を借り入れていますが、円高が続いているため40兆円近くの含み損が発生しています。
この本を読んで、通貨に関する状況を知ることはできましたが、経済を活性化する構造的な改革がなければ、長期的には通貨の信認の失い、悪性のインフレに見舞われるかもしれないという予測が外れるようにしなければならないのですが・・・・・