2012/01/04

グローバル恐慌の真相


 三が日の空いている時間を利用して、経済の現状をしっかり理解するために、経済に関連した5冊の本を読みました。

 まず、1冊目は「グローバル恐慌の真相」でした。
この本は、「TPP亡国論」で注目されている中野剛志氏の考えを知るために読んだのですが、対談であることと、新書であることの制約によるのか、矛盾していることや前提の間違いなども多くありました。

 例えば、130ページ(民衆の声はアンチグローバル化)「ドイツ国民がギリシャ救済のためにお金を使うのは嫌だという話は、ヨーロッパ全体よりドイツを優先するということで・・・・・これはグローバル化に民主主義が抵抗しているといっていい。」という記述がありますが、これは、事実を曲げています。

 ギリシャ危機の本質は、旧ギリシャ政府のひどいごまかしにあります。

 2009年10月19日に、誕生したばかりのギリシャ新政権の調査により、2009年の実際の財政赤字は12.7%であり、旧政権が発表していた4%の財政赤字は数字を操作したごまかしであったことが発覚し、ギリシャ危機ははじまりました。

 さらに、旧ギリシャ政府は、ユーロ加盟前の2000年から10年間、国際社会をだましており、本当の財政赤字が発表されていたらユーロ加盟が認められなかったことは明白で、極めて悪質です。

 ギリシャの制度は、失業者は公務員に採用(職務なし、公務員数の正確な把握なし)、年金受給は53歳から可能で、しかも、退職時の9割の支給で独身の娘であれば相続できるという持続不可能なもので、これをギリシャ政府は借金で賄っていましたが、かたやドイツでは、財政難のなかで、年金受給額の切り下げと年齢の67歳への引き上げ、その上増税も行われていました。

 ギリシャ救済に対してドイツ国民が怒ったのは、グローバル化に抵抗しているためではなく、ギリシャの悪質さが許せなかったからです。

 また、「第2章 デフレで「未来」を手放す日本」にも問題を感じました。ここでは1998年以降の日本のデフレが触れられ、構造改革に責任があるとしていますが、ここにも事実の誤認があるように思えてなりません。

 1997年のアジア通貨危機以降、韓国、台湾などでは法人税を下げましたが、日本は現在も高いままです(空洞化の一因でもあります)。また、韓国企業は、危機を契機に、合理性と利益を徹底追及するアメリカ式の経営に転換しています。

 日本企業は、韓国などに負けるはずがないという傲慢さもあり、自分たちが考えたものを売ろうとしてきましたが(結果はガラパゴス化といわれています)、韓国企業は、徹底した現地リサーチで、現地で売れるものをつくっています。

 そして、今では、韓国企業のシェアが日本企業を上回り、日本企業は敗退しています。これまでにも日立のテレビ自社生産撤退に思うでも書きましたが、日本企業は市場づくりに失敗して撤退しています。

 デフレが続いたのは、日本企業が海外で敗退してきた結果でもあり、構造改革が本当の改革になっていなかったことも大きな要素ではないかと思います。

 グローバリズムを否定したい思いは伝わりますが、日本の一面しか見ておらず、本としては拙劣だと思います。まだ、ほかにも書きたいことはありますが、長くなるのでこの程度にします。