7月8日のニュースを見て、MDウオークマンの出荷終了に思うことを書きました。そこでは、クリステンセンの「イノベーションのジレンマ(技術革新が巨大企業を滅ぼす時)」を取り上げながら思いを書きましたが、昨日の「日立のテレビ自社生産撤退」のニュースは、日本が市場づくりを重視せずにモノづくりを進めてきたつけが回ってきているのではないかと考えています。
海外を見ると、新興国をはじめテレビの販売台数は増加しているのですが、すでに日立は海外でのテレビ生産から撤退しています。日立の技術が低いということはありませんが、「良い品物を造れば売れる。」という時代ではありません。
かつて、日本製品はアメリカやヨーロッパの市場を席巻しましたが、それは、価格の割に性能が良いという割安感で、まず、低品質低価格の分野に価格以上の品質を持ち込んだからであり、最近の市場調査でも日本製品に対する欧米の消費者の感覚は、価格の割に品質が良いというもので、決して高い付加価値で売れているわけではなく、海外では日本人が思っているほど日本製品にステータスはないようです。
イギリスの調査会社MILLWARD BROWN OPTIMORによる世界企業のブランド価値調査http://www.millwardbrown.com/Libraries/Optimor_BrandZ_Files/2011_BrandZ_Top100_Chart.sflb.ashxによると、日本の家電企業は高い評価を得ていません。しかし、ヨーロッパ市場における韓国メーカーのテレビ販売シェアは30%を超えています(日本メーカーは過去においても30%を超えたことはありません。)。
昨年、フランクフルト総領事館を訪問した際に、総領事からお聞きした、日本企業の相次ぐ撤退と入れ替わりに入ってくる韓国・中国企業との行動力・瞬発力の差の話しや、ヨーロッパにおける日本の位置づけの低下の話し、フランクフルト国際空港近隣の韓国企業の広告に圧倒されたことが強く印象に残っています。
また、インドなどの新興国においては、日本の付加価値が高い家電製品に手の届く人は少ないと聴いています。量を売るためには市場づくりを進め、、その国の所得にあった価格競争に耐えうる製品を投入しなければなりませんが、日本企業は、低価格帯の商品を持っていないとも聴いています。
また、日本の広告代理店は世界に通用しないとも聞いています。現場の情報を掴み直すことからやり直さないと、日本はモノづくりの国として生き残っていけないように思います。資源を輸入し続けなければならない国が海外市場づくりを疎かにしてはならないと思います。