原田泰氏の著作「日本はなぜ貧しい人が多いのか」では、思い込みにとらわれた言論をデータ(事実)をもとに見直しています。この本の139ページにある「世帯主年齢階層別の人員当たり実質消費額」を見ると1970年に最も消費水準の低かった65歳以上の年齢階層が、次第に年金が拡充され世界一になるとともに2008年には他の年齢階層を抜いて一番消費額の多い年齢階層になっています。49歳未満の階層の消費額が80年代後半から伸びていないことからすると、高齢化により消費が減少しているわけではないということです。
しかし、それぞれの年齢階層内の格差は広がっています。非正規雇用者と正規雇用者の差、貯蓄や財産のある人とない人の差、無年金や国民年金と他の年金受給者との受給額の差などがあり、特に高齢者における世帯間の所得格差は大きいだけでなく固定しているため、地域の高齢化率が上がれば上がるほど、格差が広がっていきます。
そして、農山村部のように国民年金受給者の比率の高いところは、65歳以上の年齢階層が消費額を抑えざるを得ないので、高齢化による消費の減少をともないます。
地域間格差は1975年から90年にかけて拡大し、その後の内需拡大策もあり縮小に転じますが2002年から再び拡大しています。
小渕内閣のもとで、経済戦略会議は日本の経済成長を妨げている要因として、過度に平等・公平を重んじる日本系社会システムを挙げて、行き過ぎた平等社会と決別して健全で創造的な競争社会を構築することが必要だと答申が出されていますが、これは、1億総中流との思い込みが検証なく支持されたからで、相対的貧困率がOECD諸国のなかで高いことは無視されています。そして、その後セーフティネット構築よりも構造改革が進められました。