2011/08/12

円高は続く


 昨日の夜は、くらがき音友会の総会でした。総会といっても、例年と同じく毎年8月14日に行う納涼祭・どてどてコンサートの内合わせと飲み会ですが、中心メンバー20人程度が参加しました。

 働き盛りの30代から50代前半が集まって雑談が始まるなかで、政治への大きな失望と官僚への不信の話から、さらにヨーロッパの財政危機、アメリカの国債格下げ、70円台の円高の話となり、特に円高については製造業への深刻な影響をみんなが感じていて、将来への不安が強いことを感じました。

 円高については6月15日に書いたものがあります。

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「円高の失敗、円高こそが不景気の根源」

 浜田宏一エール大学教授の「デフレ下における金融政策の役割」、「実質為替レートと日本の失われた10年」を読みました。

 日本におけるデフレ下とリーマンショック後の貨幣政策と、OECD諸国の中央銀行の貨幣政策の歴然とした違いに驚くとともに、貨幣政策を誤って過剰な円高を招いています。

 日銀は2006年以来、日本の貨幣残高・所得比率が高いとして金融政策の抑制的スタンスを続けているが、OECD諸国の中央銀行は包括量的緩和を行い、通貨供給量が一挙に2倍から3倍以上になっているのに、日本だけが全く変わっていないが、カードや小切手による取引決済が多い社会が通貨供給量を増やしているのに現金による取引決済が多い社会が通貨量を抑制すれば、通貨間の相対的な関係により円高への圧力が高まることが豊富なデータで明示されています。

 ましてや、莫大な円キャリートレードの影響もあるなかでリーマンショック後に日本だけが別行動をとったことが円の独歩高を招いたのだと思います。

 リーマンショック後もせめて円レート1ドル100円の水準が維持されていれば、日本の鉱工業生産の落ち込み幅が、OECD諸国最大になることなく各国程度の1割以内の落ち込みで推移し、ここまで不景気にはなっていません。

 また、現在の為替水準のまま推移するなら、日本はさらなる景気の悪化に見舞われます。観光ひとつをとっても、海外からの観光客が減ったといわれますが、円が高すぎて日本への旅行は割高感があり、割安観のある国への観光が増えており、原発事故の風評もあり流れは加速していると聴きます。

 政府と日銀に対して適切な通貨対策を求めなければなりません。


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 欧米が通貨供給を増やし、お金がジャブジャブの状況で不安が起こり、リスクを少しでも低減する必要から通貨供給量の少ない円に交換しているのであり、為替介入で通貨供給量を増やさない限り円高は止めようがありません。

 中国は元高阻止のため為替市場に介入し続けています。為替市場で外貨を買って元を売ることを継続するということは通貨供給量を増やし続けているということであり、経済過熱を生み出してバブル崩壊が中国で起こるのは避けられないと思います。また、欧米各国はリーマンショック後に経済の縮小を避けるために通貨量を増やしたのであり、経済効果はあったのでしょうが、それ以上に供給されたお金が安全を求めて円に逃避しています。

 当分の間、円高が続くと思います。そして、国が何らかの対策を打ち出さなければ、国内製造業は体力を消耗し続け、縮小または海外への移転が広がると思います。しかし、日本のGDPは円では縮小しているのですが、ドル・ユーロから見ると増加していて、まだまだ大丈夫だということになります。(たとえば、1ドル=100円なら、500兆円=5兆ドルで、1ドル=80円なら、480兆円=6兆ドルとなり、日本人はGDPが20兆円減少した影響を受けますが、欧米投資家は損失を受けません。)

 しかし、輸出が減少していき、経常収支の悪化が恒常化すると日本からの資産の流失も起こり、いずれかの時点で円安に転化していくと思っています。その時、国内の製造業が回復できないほど空洞化していれば、輸出を増やすことはできず、輸入物価の高騰によるインフレに悩まされ、物価抑制のため金利が上昇し、物価上昇と金利上昇の悪循環のなかで日本の財政は立ち往生してしまう。・・・これが日本にとって考えられる最悪のシナリオではないかと思っています。

 日本は資源のない国なので、資源輸入のため外貨は必要であり、輸出産業が国内に踏みとどまれるように、早期に対策を打つ必要があります。