議員年金は積立金を使い切り財政破綻し廃止となりましたが、日本の公的年金の全体はどうなっているのでしょうか。
現在の年金は平成16年の年金改革において、5年毎に負担と給付を見直す財政再計算は廃止され、年金保険料の上限と年毎の引き上げ額を決めたうえで、社会経済環境の変化に応じて自動的に給付を調整するマクロ経済スライドが導入されています。
この改革は政府により「100年安心プラン」といわれましたが、長期的な経済成長の前提(賃金上昇率2,1%、物価上昇率1,0%、運用利回り3,2%など)のもとに積算がなされており、その前提が崩れると成り立ち得ないもので、平成17年末に時価で204兆円(簿価193兆円)あった年金積立金は、平成20年度末で時価で172兆円(簿価183兆円)まで30兆円減少しています。
そもそも、莫大な年金積立金を安定的に運用することは難しく、実際、リーマンショックで多額の運用損失を出していますし、積立金の多額の取り崩しが始まれば、マーケットは売りを織り込んでの価格形成となり、運用益を思惑通りに確保することは至難なことではないかと思います。また、正規雇用者が減少し、平均収入も減収していくなかで、保険料収入の増加が毎年1兆円見込まれていることも現実的ではないように思います。
ところで、民主党はスウェーデンの制度をモデルに改革をしようとしていましたが、スウェーデンでは月5万円のパート収入でも3分の1を所得税として納めるだけでなく、最高税率25%の消費税が課されています。そして、別に所得年金保険料が18,5%課されており、所得に応じて納めた保険料の多寡により、受け取る年金金額が決まる仕組みで、多くの年金をもらいたければ多くの収入を得て保険料を多く収める必要がありますが、年金制度の情報開示がしっかりなされていて信頼が強く、老後の安心のための必要な負担は当然という国民の合意があります。モデルにするには日本とあまりにも違いがありすぎます。
また、今回の東日本大震災に対応するための国の23年度の第1次補正予算では、国債を発行せずに財源を確保するために、23年度の当初予算に組まれていた基礎年金国庫負担約2兆5000億円が減額されました。しかし、国債の発行も国民の負担となりますが、国庫負担が減額されることによる基礎年金支給不足額の年金積立金の取り崩しも国民の負担であり、将来への不安が大きくなるだけです。将来への負担の先送りではなく、将来の安心のために今の負担のあり方を見直すことが必要だと思います。