地方財務5月号の今月の視点に中山市長が寄稿している。
タイトルは、「新しい時代の財政パラダイムを創る!(夢や可能性への制度のしわを伸ばす)」で、
*国債と国の財政管理のあり方
・そもそも財政の健全化とは?
・「国債」は国民にとっての資産でもある
・今こそ、新時代の経済財政パラダイムを!
・国債を新の宝に変える平成の徳政令
*地方財政の水平的連携と地域起点の分権型の国づくり
・新しい水平的連携の一つのあり方
・一括交付金の弊害からの脱却と分権型国家への一道程
・地方のインフラ整備の本源的な意味
*まとめ
以上の小見出しで9ページに及んでいます。
市長は、財政の健全化に疑問を表明しています。そして、「国債は政府にとっては借金であるが、保有する国民にとっては大切な資産である。国債は保有する国民にとっては、証券であり、資産であり、財産である。その累積された国債としての規模の大きさが、国家経済の発展に肯定的な影響を与えるということである。」と書き、「国債=借金図式による単純な赤字解消一辺倒の議論のみが、その後の財政行動の展望のないままに強調されすぎていないか。羅針盤を持たないなかで盲目的に削減していくことは、国債が資産として消費・投資を促す効果を有していることだけを考えても、国家経済に明らかにマイナスである。」と書いています。
私は、市長の考えには全く賛同できません。
財政法第4条は、国債発行を原則として禁止し、但し書きで、「公共事業費、出資金及び貸付金の財源については、国会の議決を経た金額の範囲内で、公債を発行し又は借入金をなすことができる」と規定して、国債は将来の世代の負担となるが、公共事業により建設される社会資本は将来の国民も利用できるから、例外的に建設国債の発行を認めています。
国の平成23年度予算で、国債は44兆円発行される予定ですが、この44兆円のうち、第4条の但し書きが該当するのは6兆円のみであり、大半を占める38兆円は赤字国債です。
平成6年以降、社会保障費などの財源不足を補うために毎年発行されている赤字国債の残高は421兆円に達しており、現在の国債残高668兆円のうち、社会インフラの整備など資産を生み出すために使われた建設国債の残高は247兆円となっています。そして、この他にも、財投債(財政投融資特別会計国債)119兆円、政府短期証券154兆円、交付税特会等借入金57兆円などの借入金があり、私は、赤字国債は減らしていかねばならないと考えます。
また、中山市長は、「これだけの国債を出しても、経済システムが維持され、円高も進むほどの信用力とそれを支える基礎的な経済体力がある。膨大な富の力の蓄積を現在にいただいているのだ。」と書いていますが、円高についての認識には大きな間違いがあります。
日本の政策金利が世界で最も安い0%代で長期安定していたことから、外国人投資家がリスクの高い金融商品を購入するため、日本円を原資として長期にわたって大量に借入れて円を売って外貨を買う円キャリートレードで運用したため、円安が進むとともに運用総額はリーマンショック前に6京円に達したといわれています。
リーマンショック前、日本の経済成長がいざなぎ景気を越えたといわれたころ、そのころ、国債の格付けも下げられておらず日本の信用は今よりもありましたが、120円近い円安になりました。
しかし、リーマンショックにより、リスクの高い金融商品は一気に信用を失い、外国人投資家は金融商品をドルやユーロに現金化しましたが、日本で借りた資金も低いとはいえ金利があるので度大量のドルやユーロを円に換えて日本の銀行に返済しています。同時に、外国人投資家が3割を保有している日本の株価も減少したために円の市場に外貨が集まりやすい状況が出来上がり、円高が進みました。そして、その後も投資マネーによる売り買いが続いているため、円高の状況が続いているというのが市場の認識です。
正しい現状認識がなければ、健全な財政運営はできないと思います。