2012/06/25

国家は破綻する(電車のなかで読んだ本)

きのうの宇治への往復の電車の中でも、本を読みました。

1冊目は「国家は破綻する」です。しかし、原題は「This time is different(今回は違う)」で、本文に国家は企業のような破産・廃業はないが、金融と経済がデフォルトを起こすと書かれていることからも、日本版のタイトルは問題ありです。
さて、この本は、過去800年間におきた66カ国の国家的な債務危機・金融危機のデータを分析したもので、めったにないと思っていた危機が実は頻繁に起こっていることと、危機には顕著な類似性があり、過去からずっと「今回は違う」と言いながら同じ過ちが繰り返されていることを証明しています。

日本国内では、「日本は対外債務は少なくほとんど国内債務だから安全だ」という意見もありますが、歴史上は、GDP100%を超える多額の債務を抱えた国は、デフォルト時に高インフレによる債務の帳消し(インフレも含めた増税)で立ち直っています。過去に学ぶなら経済成長による債務償還は不可能です。

また、対外債務の場合は債務不履行となっても、国民の負担は少ないですが、対外債務による破たんに比べ、国内債務による破たんは平均して5倍以上のインフレ率と長期の高インフレ・リセッションに見舞われており、日本の国債の発行が安全だという意見は、日本国民には通用せず、日本以外の国は被害を受けなくて安全ということにしかなりません。

国民の金融資産が多いからといって、国民が個人で国債を保有(4%)しているのではなく、国債を買い支えたのは公的資金であり、国債の保有残高は、日銀が80兆円、公的年金が100兆円、旧郵政(郵貯、簡保)が220兆円となっており、2009年10月に起きた0.3%の金利急上昇の時も民間金融機関が損切りで売り、ゆうちょ銀行が買い支えています。(国債の金利が1%上昇するだけで大手銀行は6.4兆円の損失発生となります。)

金に頼る財政、債務の信頼だけを頼りに借り換えだけが続くような経済は長続きしません。

最後に著者の言葉で締めくくります。「技術は進歩し、流行は移り変わる。だが人間が自分で自分を欺く能力は、少しも変わらないようだ。政府も投資家も自らを騙し、何度となく幸福感に酔いしれては、だいたいは悲惨な結末を迎えている。・・・心強いことに、歴史は警告を発してくれる。」