2012/05/17

社会保障と税の一体改革

 社会保障と税の一体改革に関する衆院特別委員会は、消費増税法案など関連7法案の実質審議に入りました。

 しかし、マスコミが報じるのは、一体改革の中身の話よりも、主には消費税と政局の話のように思えます。

 ですから、国民の関心の多くは、消費税率の引き上げに向けられていますが、健康保険や年金の制度改革が、消費税と同等の負担増になることがあまり知られていません。実際は、消費税を5%上げるだけでは財源が全く足らないのです。

 大和総研の試算では、健康保険や厚生年金の料率変更などによって給与から天引きされる金額が増え、夫婦の一方だけが働く年収500万円(手取り429万円)の4人世帯では、可処分所が2016年に年間で17万円も減少するそうです。同じように、年収1,000万円(手取り781万円)の世帯では、可処分所が年間55万円減少するそうです。

 また、厚生年金への加入義務の対象を広げる動きもあります。2016年度からは週20時間以上で、勤続1年以上、年収94万円以上(従業員501人以上の企業のみ。)に広げようとしています。

 健康保険料率の引き上げや年金の加入枠の拡大は増税と変わらない影響があり、多くの方には、むしろ、こちらの方が負担感が重いかもしれません。

 そして、健康保険や厚生年金の料率変更は労使折半ですから個人だけでなく、企業にとっても大きな負担増になります。

 これまで企業は国際競争に打ち勝つために、総人件費を上げないように努力してきましたが、健康保険や厚生年金の料率変更による人件費の膨張は、確実に企業の競争力を弱めることになると思いますが、対策は議論されていません(北欧ですら、企業に対し競争力を弱める負担を求めていないのに、日本の無策にはあきれます。)。

 小沢一郎は消費税増税に反対していますが、増税が無くてもそれ以外で負担は増えていきます。財政の持続性と世代間の公平性などを考えても、政府案以上の消費税増税は避けられないと思います。

 社会保障と税の一体改革に関する衆院特別委員会での中身の徹底した審議をお願いしたいと思います。