2012/05/19

ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ追悼


 戦後のドイツを代表するバリトン歌手、ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウさん(86歳)が18日に亡くなられたとのニュースがありました。1992年には歌手としての活動からは身をひかれ、後進の指導などをされていました。

 ディースカウさんはドイツ・リート(歌曲)の大家でしたが、私が中学生でクラシックを聴きだした頃は、リートは聴かなかったので、リート歌手としてよりもオペラ歌手として、特にモーツァルトのオペラを聴くなかで、「フィガロの結婚」のアルマヴィーヴァ伯爵、「魔笛」のパパゲーノとして繰り返し聴きました。

 その後、ディースカウさんの影響でリートも聴くようになりましたが、リートを聴くようになって「神に近い存在」といわれていた彼の演奏解釈と声質・声の陰影に富んだ音色の素晴らしさが良くわかり、多くの名曲を聴くこともできました。ディースカウさんに感謝しています。

まず、リートです。シューベルトの歌曲集「冬の旅」、「美しき水車小屋の娘」、「白鳥の歌」(上2点と下左)は代表作だと思います。EMIの11枚組セット(下右/限定版・廃版)は、録音は上記より古いですがシューベルト、シューマン、ブラームス、マーラー、ヴォルフ、R.シュトラウス、レーヴェ、メンデルスゾーン、ワーグナー、リスト、コルネリウスのリート作品を聴くことができます。このほかにも、数点聴いています。

次に、テノールとアルト版の方が断然多いマーラーの「大地の歌」(上2点)も素晴らしいもので、左がクレツキ指揮、右はバーンスタイン指揮、どちらも愛聴版です。バッハの「マタイ受難曲」(下2点)は、左がクレンペラー指揮、右はリヒター指揮のどちらも名盤として有名なものです。

オペラでは、モーツァルトの「フィガロの結婚」 のアルマヴィーヴア伯爵(上2点)が素晴らしく、他にも、海賊版ですが、1972年ザルツブルグ音楽祭での「コシ・ファン・トゥッテ」(下左)のアルフォンゾもはまり役と思います(今、これを聴きながら書き込んでいます。ベームの1974年の正規版よりもこちらの方が好きです。)。また、シリアスな役では、R・シュトラウスの「サロメ」(下右)のヨカナーンも素晴らしい歌唱でした。

代表作としては、アルバン・ベルクの「ヴォツェック」の題名役も忘れることができません。非常に強い緊張感に貫かれた演奏で圧倒されました。

 ディースカウさんの冥福を心から祈ります。