2014/01/18

現代中国の父 鄧小平

「現代中国の父 鄧小平」上・下巻、読了しました。




ジャパン・アズ・ナンバーワンの著者で、ハーバード大学で長く日本と中国の研究を行ってきたエズラ・F・ヴォーゲルの著書であり、現代中国を理解するための必読書だと思います。この本を読めば日中関係が簡単にはうまくいくはずがないこと、理解されないことがよくわかります。

鄧小平は、毛沢東の支配下で三度失脚しています。大躍進と文化大革命での失脚では長男が父親への圧力のため紅衛兵にいたぶられ下半身不随になっています。自身も追放され文化大革命での農村の惨状を目の当たりにしています。

しかし、鄧小平は中国の問題が毛沢東個人の過ちでなく大躍進と文化大革命をもたらしたシステムの欠陥にあると考え、復活後、改革開放へと突き進んでいます。

1978年には経済的に遅れ、貧困と飢餓が残っていた中国が、鄧小平のリーダーシップのもと、保守派の抵抗を徐々に破り、改革開放により経済発展を遂げていきます。
また、1969年には大規模な国境紛争に発展したソビエトとの戦争の心配がなくなったことも、軍の近代化を先送りし、予算をインフラ整備と経済に集中できる好条件となっています。

鄧小平の改革・開放が成功したから、中国はソビエトや東欧諸国のように崩壊することはなかったのだと思いますが、1989年6月4日のの天安門事件と相次ぐ共産主義体制の崩壊から、それまでの共産主義政治教育が限界に突き当たります。

天安門事件での制裁を受けるなかで、鄧小平は第二次世界大戦中に共産党が愛国心とナショナリズムに訴えて支持を勝ち得たのと同じように、愛国主義教育の名のもとに、中国人の愛国心を高騰させた反日宣伝工作が復活され、その後20年以上続いています。

共産党と愛国心が反日で結び付けられていることからすると、中国と日本が理解し合うのはとんでもなく難しいと思います。

かつて日本が暴走したように、中国が日本に対して愛国心で暴走することは十分にありえることであり、危機感を持ち、常に慎重に対応をすることが求められると思います。

上巻・下巻とも500ページを超える分量があり、かつ、重い内容であったので読み終えるのに時間がかかりました。