TPP交渉参加や新たな農業・農村政策など、農業をめぐる情勢が大きく揺れ動こうとしているなか、有機農業推進法は議員立法で制定されてから7年が経過し、農林水産省において有機農業推進基本方針の見直し検討が行なわれ、4月から第2期の有機農業推進政策が進められようとしています。
日本国内の有機農業栽培面積は1.6万ヘクタールで全農地の0.4%の面積です。
海外と比較してみましょう。
イタリア 109.7万ヘクタール 8.6%
ドイツ 101.6万ヘクタール 6.1%
イギリス 63.9万ヘクタール 4.0%
フランス 97.5万ヘクタール 3.6%
アメリカ 194.9万ヘクタール 0.6%
中国 190.0万ヘクタール 0.4%
推進政策での有機農業栽培面積目標1%を、もっと高くしなければインパクトがなく予算も出ないいという意見がある一方で、日本の農薬使用量は1ヘクタールあたり約15kgで世界一ともいわれていることを前提として出された意見のなかに、慣行栽培農業や、特別栽培農業に対して価値をあまり認めない否定的な意見もありました。
しかし、日本は高温多湿な気候で病害虫などの発生が多いということもありますが、作物別の比較や、法的な農薬の定義や使用規制などを個別に冷静に見ていくと、見えてくるものは違います。
たとえば木村さんの「奇跡のリンゴ」は、一般には「無農薬」と認識されていますが、法的には無農薬にはなりません。
「奇跡のリンゴ」には、法律で特定農薬に指定されている「食酢」が使われていて、木村さんが、自らの栽培を「無農薬」としていることについて、「農薬の使用について現在ではその問題点が様々な方面から提起されているが、この場合の『農薬』が食酢のような特定農薬を意味しているわけではないことが明らかと思われるから」と解説されています。
無農薬について法的な見直しも必要でしょう。
無農薬について法的な見直しも必要でしょう。
また、アメリカのワシントン州や、イタリア、スペインの農業を視察させていただきましたが、乾燥気候の風土では病害虫の発生が少なく、有機無農薬農業を進める条件が大きく違います。
また、一口に有機農業といってもさまざまな栽培方法があり、自己満足に近いものもあるように見受けられるので、慣行栽培や特別栽培を否定的にみて攻撃するのでは、有機農業は広がらないと思います。慣行栽培や特別栽培農家を納得させる成果が必要だと思います。
さて、「有機農業の明日を語る会」には想像していたよりも多くの方が参加されました。
トップバッターは、星寛治さんです。有機農業40年、山形県高畑町にこの人ありと言われている農民詩人であり、その長い実践を通じてネットワークを広げて周囲に理解を広められ、有機農業を高畠町に定着させられています。攻めの農政への辛口な問題提起でした。
続いて、鶴巻義夫さんです。日本有機農業研究会の設立メンバーの一人で豪雪地帯である新潟県津南町の有機農業家。有機栽培と加工販売の「津南高原農産」を経営されています。原発の問題を話されていました。
最後は、金子美登さん。埼玉県小川町の有機農業家で全国有機農業推進協議会理事長。「霧里農場」を経営され、これまでに120人を超える研修生が育っています。また、1982年から関東地方の有機農業者を中心に有機農業の種苗研究会を続け、種苗の自家採種もされ、交流や販売などで有機農業の優位性を証明し、集落全体に協力者が広がり、日本初の有機の里を実現されています。農村のエネルギーの自給を含めた提言でした。
呼びかけ人3人からの問題提起と提言を受けて意見交換。
多くの有意義な意見がでましたが、有機農業の理解を広めるためには、優良な次世代の実践家を多く育てて広めることと、そのために自由貿易の障壁とならないEUのような硝酸窒素削減などの環境型保全農業への農政転換を働きかけることが必要だと思いました。