集落が維持されることが優先されたが、それでも困窮すれば集落は捨てられた。集落維持にはそこで暮らしていけることが前提にあった。
今は暮らせるか暮らせないかではなくて、住みたいところに住める時代、所有者が管理できないのに思いだけで人を受け入れない家も多く、このままでは廃屋が増えていく。
帰郷への思いもわかるが、空き家となった家は簡易に所有権移転できる制度などを考えていく必要もあると思う。
・・・・以下新聞記事です。
兵庫県佐用町の無人集落 帰郷への思い消えず
神戸新聞NEXT 1月4日(土)18時1分配信
過疎と少子化の影響で、都市部より先に人口減少が進む中山間地域。暮らす人がいなくなり、すでに“消滅”してしまった集落があると聞き、昨年暮れに兵庫県西北部の佐用町・若州(わかす)地区を訪ねた。
佐用町を南北に貫く国道373号を車で北上し、岡山との県境にある同地区に着いた。民家十数軒が立ち並び、手入れの行き届いた家も多いが、どこも雨戸や門扉が閉まっている。辺りは怖いほど静まり返っていた。
緩やかな坂を上って集落を奥に進むと、民家の庭先に、ほうきを手にした高齢女性の姿があった。声を掛けると、「年末なので、掃除に帰って来たんです」。民間のバスが3年前に撤退した後、町が走らせている有料の送迎車で来たという。
「育った家なんですよ。不便で町内の別の所に移ったけど、離れがたくて。こうして時々、用事をつくって戻ってくるんです」。柔らかい笑みを浮かべ、女性は家の中に消えた。
女性宅の隣には、大きなかやぶき屋根をトタンで覆った立派な古民家があった。神戸市の会社員春名正浩さん(59)が高校卒業までをすごした家だ。
春名さんに連絡を取ると、年2回、町外に住む兄、姉と3人で、傷んだ箇所の補修や、鹿よけ網の取り付けのため、故郷に戻ると教えてくれた。
両親が他界し、10年前から家は無人だが、電気も水道も引いたままにしている。「もう人が住むことはないけれど、近くにお墓があるし、きょうだい3人が健在の間は家を守りますよ」と春名さん。
半世紀前には約30世帯100人が暮らしたという集落を後にし、町役場に寄った。担当職員によると、女性や春名さんのように、集落を離れても家を残す人は多いという。
「誰も住まなくなっても、人の気持ちが残っている間は集落は消えない」と担当職員。その言葉に若州の風景が重なった。
(宮本万里子)
以上(Face Book1月5日より)