2011/06/15

円高の失敗、円高こそが不景気の根源

浜田宏一エール大学教授の「デフレ下における金融政策の役割」、「実質為替レートと日本の失われた10年」を読みました。

 日本におけるデフレ下とリーマンショック後の貨幣政策と、OECD諸国の中央銀行の貨幣政策の歴然とした違いに驚くとともに、貨幣政策を誤って過剰な円高を招いています。

 日銀は2006年以来、日本の貨幣残高・所得比率が高いとして金融政策の抑制的スタンスを続けていますが、OECD諸国の中央銀行は包括量的緩和を行い、通貨供給量が一挙に2倍から3倍以上になっています。

 日本だけ通貨供給量が全く変わっていませんが、カードや小切手による取引決済が多い社会が通貨供給量を増やしているのに、現金による取引決済が多い社会が通貨量を抑制すれば、通貨間の相対的な関係により円高への圧力が高まることが豊富なデータで明示されています。

 ましてや、莫大な円キャリートレードの影響もあるなかでリーマンショック後に日本だけが別行動をとったことが円の独歩高を招いた一因だと思います。

 リーマンショック後も、せめて円レート1ドル100円の水準が維持されていれば、日本の鉱工業生産の落ち込み幅が、OECD諸国最大になることなく、各国程度の1割以内の落ち込みで推移し、ここまで不景気にはなっていません。

 また、現在の為替水準のまま推移するなら、日本はさらなる景気の悪化に見舞われます。

 観光ひとつをとっても大きな影響があります。、海外からの観光客が減ったといわれますが、円が高すぎて日本への旅行はたいへん割高感があり、割安観のある国への観光が増えています。そして、原発事故の風評もあり流れは加速していると聴きます。

 政府と日銀に対して適切な通貨対策を求めなければなりません。