夕張市の財政破綻のもととなったのは、不正な会計操作ですが、総務省の担当職員も北海道庁の担当職員も早くから知っていましたが、相次いだ炭鉱事故と産炭地政策の失敗から、政治的に黙認されていたのが現実です。
議員は市長や職員から説明を受けますが、その説明が正しいことを前提に判断をしています。しかし、意図的かそうでないかは別としても、間違いはあります。
議会最終日に下水道料金等の値上げが提案されました。所属する産業建設委員会に付託されるため質疑は出来なかったのですが、その質疑のなかで私は2回議事進行の発言をしました。
今回の値上げの根幹にかかわる一般会計からの繰り入れについて、基準内と基準外の説明に明らかな間違いがありました。総務省は基準内の算定方法を定めていません。
総務省は「その経営に伴う収入をもって充てることができないと認められるものに相当する額」と規定しているものの、具体的に算定方法は定めておらず、市町村の判断に任されています。
しかし、もし、私もこのことを知らず、議事進行を出して執行機関側の説明の訂正をさせなかったら、全議員が間違った説明をうのみにしていたと思います。
そして、間違った前提で審査をしていたと思いますが、専門的な勉強をしなければ間違いに気づくことはできません。
他にも、過去において不法な財政処理があります。病院事業会計の一時借入金です。地方公営企業法29条2項は、「(一時)借入金は、当該事業年度内に償還しなければならない」とし、例外として3項で「借り換えた借入金は、1年以内に償還しなければならない」と規定しています。つまり、何年も連続した借り換えは地公法の規定に抵触します。
多くの実態は借り換えしながら、借入金が増えていき、返せなくなります。京丹後市においては、一時借入金の残高が平成18年には15億円となりましたが、総務省の公立病院改革ガイドラインによる改革と公立病院特例債が認められ再建の途上です。
一方で、平成19年に、宮城県の公立深谷病院は、17億円を超える一時借入金を抱え、経営の継続を断念して閉院し、建物は民間医療法人に無償貸与となりました。
どちらにおいても、総務省は執行の責任よりも議会の怠慢を指摘していますが、首長も考える必要があると思います。
以下、朝日新聞の記事を引用します。
首長が見た議会 西寺雅也・前多治見市長
2011年02月15日
西寺雅也・前多治見市長 |
05年に提出した時、議会は誰も賛成してくれず、審議未了で廃案になった。だが、そこで厳しい緊張関係になったのが良かった。市議は地方自治のあり方について我々にただし、こちらも本気になって反論した。その後、再提案した時は全会一致で可決された。
ほかにも議案を否決されたこともあったが、粘り強く話し合った。首長と議会が議論しようと思わないと、民主主義は育たない。
■2006年に可決された「市政基本条例」(自治体基本条例)は、いったんは否決され、市議会と激しい議論になった。
これまで「改革派首長」と言われてきた人たちは、議会を敵にしてたたくことはなかった。今は首長が議会を敵視して、一般市民がそれを支持している。
そんな議会への危機意識を議員全体が持っているだろうか。
行政は積極的に市民参加を取り入れて、職員にも勉強になっている。参加者と行政の信頼関係の構築にもつながっている。ところが、議会は閉鎖的で市民参加の議論はしてこなかった。議会の必要性を市民に理解してもらうには、ほど遠い状況だ。
ただ、「議員のボランティア化」は今の時代に合わないと思う。日本の自治体は欧米に比べると行政の仕事が多い。高齢化が進み、地域社会が抱える課題が増え、専門性が必要になってきた。真剣に議員活動をしようとすると、福祉や環境、財政など範囲が広くて難しいだろう。
議員は自力で何でもやろうと思わなくても良いと思う。問題意識を持っていればいい。行政だって立案には外部の知恵を借りている。同じことを議会もやれば良い。だが、今の議会事務局の体制では立案には不十分だ。
■名古屋市の河村たかし市長のように、議会と激しく対立する首長が目立つようになった。
議員の政務調査費の決裁は市長がやっている。これはおかしいと思った。名古屋市では首長と議会が対立して、議会側が議会報告会の予算を要求しても、首長が付けないということも現実に起きた。議長と首長が非公式で話し合って予算に一定の枠を設け、議会の決めた使い道を首長が追認するルールができれば良いと思う。
■06年の北海道夕張市の財政破綻(は・たん)をきっかけに、「行政への監視機能が足りなかった」という議会の怠慢が指摘されている。
北海道栗山町を皮切りに、06年から議会運営の基本原則をうたう「議会基本条例」が各地で制定されてきた。栗山町は夕張市の隣にあり、議会で財政問題を考えようというのが出発点だった。そのうち、議員も財政を分からなければだめだとなり、町の「総合計画」にも議会が対案を示した。動き出した議会もある。
議会改革が始まれば、目に見えて変わってくる。住民から選ばれた首長と議会が相互に監視し合う、現在の「二元代表制」がいけないからといって制度をいじるよりは、今の議会改革がもっと進んで市民の理解を得る方が健全だ。変わろうとする議会の動きを大切にした方が良いと思う。(舩越紘)=おわり
【西寺雅也・前多治見市長】
多治見市議を5期務め、1995年の同市長選で初当選。県内初となる自治体基本条例を提案し、成立させた。3選後の2007年に退任。政府の事業仕分けにも参加した。現在は山梨学院大教授。66歳。
Q.行政の長から見て、議会はどうあるべきか(主な意見を掲載)
■細江茂光・岐阜市長 市民目線で市民の声を反映させること
■古川雅典・多治見市長 立法府としての自覚を持ち、それに基づいた言動と行動
■大野信彦・土岐市長 政策などの提案を今まで以上に積極的に
■日置敏明・郡上市長 議会活動の「見える化」が今以上に必要
■松永清彦・海津市長 行政の知識の向上
■中川満也・垂井町長 諸制度を深く理解し、行政全般を見渡せる見識
■浅井健太郎・関ケ原町長 県議会をみればすべてがわかるはず。県財政の悪化の責任は、前知事と議会のチェック能力の欠如による
■木野隆之・輪之内町長 適度の緊張感は必要だが、妥協のない対立は住民には好ましくない
■室戸英夫・北方町長 選挙目当ての大衆迎合で民意を満足させることが優先する、おねだり質問ばかりが横行しているのは残念。時には住民の考えを変える役割を担う努力も必要ではないか