2011/10/18

子どもの貧困(電車のなかで読んだ本)

日本の子ども達が置かれている現実は、機会の不平等が極めて強く、その解消に向けた努力の跡が見られず、そんな綺麗事では済まされません。(日本は、OECD諸国のなかで、政府による再分配後に格差が拡大する唯一の国です。この格差の是正を議長の時に民主党の国会議員に訴えましたが、理解していただけなかったようです。)

欧米諸国では、これまでから、子どもの成長を10年~20年といった長期で調査しています。
そして、子どもの頃の貧困の経験と成長してからの境遇とがどのように関連しているのかを実証的に調べており、子どもの貧困と成長してからおかれる境遇とには明らかな相関関係があることが報告されています。

しかし、日本においてはこのような長期の調査はないのですが、著者が属している国立社会保障・人口問題研究所の「社会生活に関する実態調査(2006)」によると、

15歳児の貧困 → 限られた教育機会 → 恵まれない職業 → 低所得 → 低い生活水準

という負の連鎖があり、それが世代間における学歴と職業階層の継承において連鎖していることが指摘されています。

また、OECDの報告書においても、日本の相対的貧困率がアメリカについで第2位であるだけでなく、子どもの貧困率も高く、特に母子家庭の貧困率が突出して高いことから、日本政府に対して警告がなされています。

この本で特に印象に残ったところがあります。

原文をそのまま引用
『(元東京都江戸川区福祉事務所ケースワーカー)私たちが勉強会をはじめた20年前、区役所では多くの高校卒業の職員を採用していました。また、高校さえ卒業して言えば、正規の社員として会社も採ってくれました。・・・・・かつて私たちは、保護世帯の子ども達に、「何とか高校へ行け。一生懸命勉強して公務員試験を受けろ。おれたちと一緒にケースワーカーをやろう」と話しました。

今は言えません。勉強会のスタッフである大学生ですら、公務員試験に合格するのは容易ではないからです。将来の見通しが立たない時代に、基礎学力を持たない子どもたちがこれだけ増加すると、何とか頑張って高校に行こう、卒業しようという意志も続かなくなってしまうのです。』
P158より引用

子どもの貧困の解消には、労働政策の問題や、教育、福祉、租税(給付つきの税額控除)のあり方など多くの課題がありますが、これらを解決していかないと格差の広がりとともに子どもの貧困が増加し、少子化にも歯止めがかからないように思います。