2011/12/06
EU危機
EUには27カ国が参加し、その内の17カ国で統一通貨ユーロが使われています。
今年になってギリシャ財政問題は、EUの政策当局が小手先による問題の先送りに終始していたために、信用不安が顕在化し、市場が破綻を懸念してギリシャ国債を売ったため、急速に金利が上昇して負の連鎖に陥るという状況になっています。
ギリシャ問題はいったん収まりましたが、市場の不安は解消せず、財政問題を抱えるイタリア、スペインにも波及し、国債が売られて危険水域といわれる7%前後まで金利が急騰しました。しかも、財政危機諸国の支援に回っているフランスの国債格下げ懸念からフランス国債まで売られるということで市場不安の増幅が拡大しています。
市場によるユーロの信用不安が、そうした国の国債を大量に抱えるEU内金融機関の財務を直撃しています。国債の金利上昇により、金融機関の資産が劣化し、資本不足に陥るのではという金融システム不安が広がっています。
最近のEU内の報道によると、一部の大手金融機関では、保有する国債から多額の損失が発生する可能性があり、銀行間市場での資金取引に支障が出ているようです。また、一部の国では、金融機関の信用力の低下によって、預金者が金融機関から預金を引き出す取り付け騒ぎが始まっています。今後、信用不安がさらに深刻になっていくなら、金融機関の企業に対する貸出スタンスが厳しくなり、貸し渋りや貸しはがしなどが発生することも懸念されています。
すでに中国では、EU向けの輸出に減速がかかり、400以上の輸出のための工場が閉鎖に追い込まれたとの報道もあり、日本の化成品メーカーでは、中国向けの出荷を抑えるために操業を抑制している企業も出ています。
リーマンショック時の財政支出により、EUだけでなくアメリカをはじめ主要各国が財政事情に問題を抱えています。現在、ユーロ危機から金融収縮による不況に陥ることが懸念されていますが、財政支出がもう使えないと考えざるを得ないため、長期の景気後退も予想されています。