2011/12/19

TPPとドーハ・ラウンドの破綻(修正版)

 
 15日の産業建設委員会では、下水道料金値上げの3議案の採決後に「TPPへの参加反対の意見書を求める陳情」について、意見交換、討論、採決を行い、賛成2名、反対4名、欠席1名で不採択となりました。

 私のTPPに関する考えは、これまでにも(TPPを農業政策の転換の好機にTPPへの理解不足TPPへの参加反対の意見書を求める陳情)このブログに書いていたのですが、昨日、WTOによるドーハ・ラウンド(150カ国以上が参加した貿易自由化交渉)での一括妥結断念の報道があったので、今後、保護主義の台頭することが懸念されることなども含めて、書きこみます。

 ドーハ・ラウンドが停滞するなかで、各国の貿易自由化の取り組みは2国間、もしくはグループごとの交渉に軸足が移されていました。2011年6月時点で世界で発効済みのFTAがすでに199件もあり、さらに関税協定などを入れると474件もありますが、日本はドーハ・ラウンドでの自由化交渉を主として考えていたため、取り組みは遅れています。

 ドーハ・ラウンドにおける大幅な関税引き下げの例外、いわゆる重要品目の割合を8%にしてほしいという日本の主張は、ほとんど相手にされず、高い関税で農産物を保護するやり方は、既に限界にきていたといえます。実際、コメは高い関税のもとで長年減反が続けられてきましたが、貿易自由化に関係なく国内消費の減少により、米価は下落しており、国内産作物も、輸入農産物の価格に徐々に近づけながら、所得の目減り分は、政府が税金で保障して行く方向にシフトしていく必要があります。

 EUでは20年以上前にこうした方向に政策を変えた結果、農業生産は安定し、国際的な競争力も向上したといわれています。食料の確保・安全・安心の面で、国内生産の重要性に対する認識は深まっています。政府が直接補償する農家所得の範囲をどのように決めていくかなどの問題もありますが、政府は選択肢を国民に示し、日本農政を転換する必要がります。

 多国間協定であるTPPについても、アメリカやオーストラリアなどの9カ国によって、全品目での関税撤廃を目指す拡大交渉が加速したのは、ドーハ・ラウンドが妥結に至ることが不可能だと判断してのものですが、 アメリカの農業は実際は補助金漬けで弱い分野であり、TPPの交渉では農業の競争力の弱い日本には攻め込めるが、競争力の強いオーストラリアの農作物に攻め込まれたら、アメリカの農業はおおきな打撃を受けるといわれています。

 すでにアメリカは、TPP交渉の場でも砂糖や乳製品を例外にするよう主張し始めており、完全に例外なしの交渉をしているわけではないようです。

 日本は、ようやく11月にTPP交渉への参加を表明しました。一方で、オーストラリアやEU(欧州連合)とのEPA(経済連携協定)の協議も続けていますが、これまでにEPAが発効した相手国・地域の日本の貿易総額に占める比率は18.2%に過ぎません。

 ドーハ・ラウンドが実質的に破綻したため、2国間・多国間でFTA協定を結ぶ流れはさらに加速していきます。WTOによるあらたな世界貿易ルールの確立は極めて難しくなり、通商紛争の解決も難しくなるように思います。

 また、こうした流れは、グループ内の国々との貿易だけを優遇し、グループ外の国々との貿易を抑制する保護主義的な傾向が強まることも懸念されることから、資源を海外に依存し、貿易の重要性が高い日本のような国は、結局は多くの国々との自由貿易の交渉が必要となります。

 日本はTPPの協議に参加して交渉すべきだと思います。しかし、国内でリーダーシップが取れない政府が、交渉の場でリーダーシップを発揮することを期待することには無理があると感じています。


以下、15日の意見交換での発言と反対討論の要約です。

 (意見交換での発言)
 この陳情は、TPP参加に向けた協議を中止することを求めているが、日本は資源のない国であり、貿易立国でもある。

 すでに、日本の関税は低いと言われているが、TPPに参加するなかで他国の関税も下げていく必要があり、交渉のなかに入っていかなければ日本が浮いてしまう可能性がある。

 米韓FTAにおいては、韓国のコメは除外されており、日本もTPPのなかに入り主張すべきを主張すれば、完全自由化を目指すなかでも除外は可能ではないかと考えている。

 TPPへの新規参加を希望する国は、交渉に参加するか否かだけでなく、交渉の結果できあがった協定に政府が署名するか、政府が署名した協定を議会が批准するか、協定に参加した上で不都合が生じた場合、協定の修正を要求するなど、今後も取りうる手続きが残されており、情報が少ないことは問題でもあるが、手続きが進められているなかで、協議を中止することは非民主的である。

 自由貿易の流れは止まらず、FTAやEPAが2国間で進んでもいる、日本が協議に入らないことはあり得ない。

 農業分野については、これを機に韓国のように新たな対策を打っていくべきであり、農業については新たなチャンスが芽生える可能性も十分あると考えている。

 陳情者からはカリフォルニア米が3000円という説明もあったが、調べてみると、たしかに、カリフォルニア米の長粒種には3000円のものもあるが、日本人が食べるコシヒカリは現地で17000円、生産者原価は9000円前後のようであり、価格差は縮小している。

 日本でもアメリカのように農業への補助金の体制をしっかり組み立てていく必要がある。日本単独では人口が減少していくこともあり、需要がなければ減反はさらに進んでいく。輸出ができる農業の体制をつくるため、政府は農業対策を全力で考えながら交渉を進める必要がある。

 (反対討論)
 今後日本がアジアのなかで、また環太平洋の国々のなかで一定の役割を果たすため、自由貿易体制のなかで国の地位を守るためには、TPPの協議に参加しないという選択肢はないように思っている。協議に参加し、批准するのか、修正するのか、どのようにするのかは今後の課題であり、また、情報が開示されていないこともあるが、今後協議に入っていくなかで情報は開示されていくと考えている。日本は関税率が低いが、他国の関税率について言っていくことができる。

 農業分野については、TPPの枠組みに入っていくなかで、新たな農業政策を打ち出していくチャンスでもあると考えている。韓国においても、米韓FTAのなかで新たな農業政策を打ち出し、農業予算も大幅に増額している。

 日本の農業おいても、アメリカやEUのような(直接保障)補助金の体制を確立していかなければ残りえないと考えている。現に、FTAもTPPも関係なく、この数十年で減反は強化されており、関税で守るだけでは、限界があると思っている。

 関税で守る体制から、自由貿易のなかで補助金を使いながら農業をしっかりと支援していくという体制も十分考えられ、実際にアメリカやEUもそういった体制が取られているなかで農業がある。

 この陳情は農業者団体の陳情であり、農業について特に触れながら、今後の農業や日本の状況を考えるなかで反対する。