ドミニク・テュルパン、高津尚志 共著「なぜ、日本企業は「グローバル化」でつまずくのか~世界の先進企業に学ぶリーダー育成法~」を読みました。
著者の一人ドミニク・テュルパン氏は、1981年に日本の驚異的な成長を学びたいとフランスから日本に留学しています。
海外進出した日本企業は、現地の工場を日本化することでそれなりに成功していましたが、テュルパン氏の目に当時の日本は、もう海外から学ぶものはないという傲慢な態度が見受けられ、工場管理のマネジメントには成功したものの、多様性(ダイバーシティ)のマネジメントは苦手であり、海外のM&Aは失敗しました。
日本は1992年までの10年間、世界競争力(企業が競争力を持続できるような環境を生み出し、維持する国力)トップの座にありましたが、2011年には26位まで後退しています。
日本にいると日本製品があふれていて気づきませんが、世界の市場において、日本製品のシェア率も下がっています。G20全体で世界のGDPの85%を占めますが、日本新興国市場での展開に立遅れ、G7の時代から拡大ができていません。
「日本企業は欧米市場では成功を収めたが、新興国での展開がほとんどできていない。欧米での成功に、あまりにも長い間酔っていたのではないか。」といわれています。中国の輸出の約6割は新興国向けで、アフリカ諸国やブラジルなどに積極的に投資しています。
日本企業は円高でつまずいたといわれる方もあるとは思いますが、多くの日本企業が組織・マネジメントに問題があり、円高がさらに追い打ちとなったと考えるべきだと思います。
著者が考える日本企業のつまずきの要因は、
①競争優位でない「高品質」にこだわり続けた・・・・・デジタルテレビにおいて、世界各国の市場でテレビに一定以上の品質を求めてプレミアムを払う消費者が少ないのに、消費者から求められていない高画質を追求して、消費者に評価されず価格にも転嫁できない。
②生態系の構築が肝心なのにモノしか見てこなかった・・・・・デジタル技術を活用して気軽に音楽を聞くためにアップルはipodをシステムとして生み出しましたが、ソニーは音質のものづくりこだわりました。良い物をつくれば売れるという考えで技術で勝ってビジネスに負けます。
セイコーの時計は、開発した画期的な正確さを誇るクォーツ技術により世界のトップに躍り出、さらなる技術品質の追求を進めましたが、装飾品としての美しさを追求したスイスのメーカーに敗れました。今やセイコーはブランドマネジメントの失敗例とされています。
③地球規模の長期戦略が曖昧で、取り組みが遅れた
④生産現場以外のマネジメントがうまくできなかった
・・・・・商品開発やマーケティング、営業での立遅れ。現地人スタッフの軽視。
著者はこれらのつまずきの要因を生み出したのは、人材への投資、特にグローバルな人材育成のための投資ができていなかったことにあり、グローバル企業の先進事例を学び、地球規模で活躍するリーダーを育成することが日本企業の未来を切り開くと、先進企業の事例を上げて提言しています。
日本は世界のなかの一つの国であることを意識した、グローバル・マインドを持ったリーダーが各分野に育つことが必要だと思います。