「江戸の市場経済」と「江戸商人の経営」2冊の感想です。
封建制下の江戸時代に自由主義的で高度な市場経済が日本で発達しています。
武士の経済であった米本位経済は貨幣経済に組み込まれ、金・銀・銭の三貨制度の変動相場と、為替による金融業の発達。また、コメの先物取引や実質的に市場メカニズムで決められていた金利水準など、公儀による交換比率や公定比率はほとんど守られることなく、市場経済システムが決めています。
そして、創業者の家業がかたくなに守られる保守的なイメージとは違い、市場環境の変化に応じて事業の再編と集中や、多角化産地形成のための資本投下、M&Aなど、市場メカニズムと市場競争が働いています。
江戸時代に市場経済が発達したから、「読み・書き・そろばん」の寺小屋も発達。江戸では寺小屋師匠番付も発行されており、親が我が子の教育先を選択するための案内として利用され、評判の高い寺小屋にはブランド価値があり、就職先が決まっていったようです。
江戸時代の市場経済システムが根幹に関わるような断絶もなく明治に引き継がれ、日本が発展していく基礎になりますが、その後、統制経済、社会主義的経済が続いたため、江戸時代の市場経済の伝統は途切れ、江戸時代と現代日本の市場経済の間には断絶が生じていると思います。