2011/11/27

老いてゆくアジア・消費するアジア


 26日は、妻の希望もあり、夫婦で入院中の娘を見舞いました。日帰りでしたが、時間がゆっくり取れるように早朝に自宅を出て、福知山から電車に乗り、娘が入院している東京都大田区の東京労災病院まで出かけました。

 お腹の張りがあり、きょうから点滴が変わったとのことでしたが、娘は元気で、夫婦仲良くやっているようでした。あとは、無事に元気な赤ちゃんが生まれることを願うだけです。

 行き帰りの電車では夫婦して本を読んでいました。ここでは、私の読んだ本を紹介します。
 「老いてゆくアジア」は、アジアでの高齢化が日本と同等、あるいは国によってはそれ以上のスピードで高齢化が進んでいることが書かれています。

 アジアでの人口転換は、「多産多死」→「多産少死(人口爆発)」→「少産少死」→「少子化」の流れで家族形態の変化と都市への人口集中をともないながら進んでいます。日本では1995年から生産年齢人口が減少に転じていますが、NIESと中国、タイは2010~15年その他のASEAN諸国は2025~40年に減少に転じます。

 同時に、アジアでは出生率の低下とともに平均寿命が短期間で伸びており、高齢人口は1950年の4729万人から、1980年には9615万人、2005年には2億1437万人まで増加しています。そして、今後の予測では、2025年には4億1207万人、2050年には7億5005万人まで増加すると予測され、高齢人口爆発の時代に入っています。
 日本を除くアジアの国々は、人口ボーナス(一国の人口構成で、子どもと老人が少なく、生産年齢人口が多い状態。豊富な労働力で高度の経済成長が可能。子どもと老人にお金がかからないので貯蓄率も上昇し資金も増える。多産多死社会から少産少子社会へ変わる過程で現れる。)のなかにあり、かつての日本がそうであったように高い国内貯蓄率とともに成長を続けています。

 一方、日本は人口オーナス(高齢人口が急増する一方、生産年齢人口が減少し、少子化で生産年齢人口の補充はできず、財政、経済成長の重荷となった状態。)に入りかけています。家計の貯蓄率は1990年の16%から2010年には2%へと減少しており、まもなく貯蓄率はマイナスとなり、貯蓄の取り崩しが始まります。

 すでに、日本には国民皆医療制度や年金、介護などの社会保障制度が整備されていますが、アジアの国々は遅れており、これからの高齢化社会を見据えて福祉社会への転換が進められています。なかでも年金制度の確立は急がれていて、アジアの高齢者を誰が養うのかが大きな課題として指摘されています。

 著者も書いていますが、繁栄は長続きしないのかもしれません。


 「消費するアジア」も著者は同じなので、「老いてゆくアジア」と同じ人口動態の考えも示されていますが、激しい国際競争下にあって、日本のような地方への財源の還元ができていないため、大都市の富裕層と地方・農村との地域間格差が日本に比べて大きいことが指摘されています。

 また、昨年、中国は1人当たりGDPでは約4500ドルと、まだ中所得国に入ったところですが、日本を抜きGDP(国内総生産)世界第2位の経済大国となりました。しかし、中国の先進国入りは難しいのではないかということが「中所得国のワナ」として指摘されています。

 この「中所得国のワナ」は、発展途上国から抜け出した中南米や東アジアの国々が中所得国まで来たところで貧富差拡大や汚職、都市のスラム化など難題に直面し、長期停滞に陥る傾向がみられることから、世界銀行が2007年にまとめた報告「東アジアのルネサンス」で登場しています。

 「中所得国のワナ」の先行例はチリやアルゼンチンなどの中南米諸国で、アジアではマレーシア、タイ、インドネシアで似た現象がみられるとして、なぜ体が政治不安に陥ったかが記述されています。そして中国も同じ失敗を繰り返すのではないかと懸念されています。

 1人当たりGDPが1万ドルを超えた日本、韓国、台湾、シンガポールは、数少ない例外です。