2011/11/06

「都市縮小」の時代(電車のなかで読んだ本その3)

(電車のなかで読んだ本その2)より続く

 アメリカのヤングスタウン、ピッツバーグ、バッファロー、イギリスのバーミンガムなどでは、重圧長大産業が衰退し、マンチェスターなどでは繊維産業が衰退して、雇用を失い都市人口を減らしています。他にも、アメリカでは郊外開発によって都市中心部の人口喪失が起きていますが、1990年から2000年の間に世界の4分の1の都市が人口を減らしています。

 日本では、もっぱら農山漁村の過疎化と中心商店街対策が問題とされ、生活者の視点からの都市の再構築は遅れていますが、アメリカと同じく郊外開発により中心部が衰退している地方都市は多くあります。そして、もう一方では世界の国々と同じように、大都市への人口集中が起こっています。

 1960年に人口16万人であったヤングスタウンは、雇用確保のために刑務所の誘致などの努力をしていますが、40年後には半分の8万人となっています。(この間にアメリカの人口は2億人から3億人に増えており、人口増加なかでの都市人口減少は極めて深刻な問題です。)

 ヤングスタウンでは、まちの現状と目指す方向性について考え方を共有する作業からスタートし、時間をかけて繰り返しワークショップが開かれ、真摯な討論が行われた結果、昔のヤングスタウンに戻ることを考えず、厳しい現実を受け止めて「賢い衰退(持続可能な都市再生)」を希求する政策を実施に移し、縮小都市政策の実験場となっています。

 縮小する現実を住民が受け入れるのは簡単なことではありません。しかし、かつての栄光の時代の思い出に浸っていても問題解決にはならず、また、人口増加を夢見て都市政策を立案することは現状を無視することになります。ほかの都市、バッファローやデトロイトで政策立案されたカジノによる都市再生は馬鹿げたプロジェクトとして両市の市民から否定されています。往時のにぎわいを回復することは不可能だという共通理解がなければ、縮小都市政策は進みません。

 京丹後市も、人口の減少が予測されており、人口減少による行財政の悪化が予測されます。土地を浪費する車依存の土地利用は規制していかないと、社会インフラの維持もできなくなります。この本と、以前読んだ「撤退の農村計画」は、これからの高齢化人口減少社会のなかで持続可能とするための前向きな提言として参考になりました。